完成された硬派な漫画、トミイ大塚著『ホークウッド』全8巻をご紹介。やたらに面白い傑作漫画である。
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舞台は1346年~1347年のフランス。イングランド王エドワード3世とフランス王フィリップ6世の間でフランス領内の土地とフランス王位を巡って起きた戦争中のお話。
物語の主人公は白鴉団と名乗る傭兵軍の首領、ジョン・ホークウッド。
イングランド生まれのこの男がいかなる経緯・理由で専属の会計・契約担当者を雇用し、フランスで傭兵軍を率いることになったかは作品中では全く触れられていない。
とにかく、ホークウッドはイングランド王エドワード3世の嫡男、エドワード黒太子(作中では王太子)に雇われてイングランド側に与して戦うことになる。
ホークウッドは戦闘者であると同時に戦略家であり策謀家でもある。理想や理念に左右されない、超現実主義者でもある。
荒くれ者たちの集団である傭兵部隊を統べて、目指す野望は「傭兵の大部隊を作って指揮する」ぐらいしか作中では表現されていない。
物語の最後には、戦争は一旦落ち着き、それまでの功績が認められ正式な騎士への転身と召し抱えをエドワード王太子から直接勧められるが、これを断って傭兵部隊を引き連れて戦場に戻る。
フランスにはまだまだ彼と彼の傭兵部隊が金を稼ぐ機会がゴロゴロしているとうそぶいて。
『理屈コネ太郎』の印象としては、ホークウッドは筋金入りの自由人なのだと思う。
彼は自由の代償と結果責任を全てす引き受けて生きようと無自覚に決め込んでいるのだ。
騎士道精神や忠誠心などは、誰かが別の誰かを統率するために編み出された規律に過ぎないと彼は見切っている。だがそんな彼も、雇用主と交わした契約には従順だ。
生きて、戦って、稼いで、そして明日を迎える。そんな男の物語である。
作中には残虐なシーンも出てくるが、清潔な描画で確かな画面構成で読む人に苦痛を与えない。
トミイ大塚著『ホークウッド』、傑作だと思う。
因みに、当サイトで紹介した『狼の口 ヴォルフスムント』(当サイト内当該頁を開く)と合わせて読むと、ヨーロッパの歴史に興味が湧いてくること間違いなし。
なんといってもジョン・ホークウッドは実在の人物なのだから。
以上。
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